醤油造り

江戸時代から受け継がれる蔵

川越で約250年続く蔵元である松本醤油商店。
天保元年に建造された蔵には、江戸時代から使い続けている杉桶が40本並び、
今なお昔ながらの手法によって製造を続けています。歴史ある蔵の中には、
麹菌や酵母菌、乳酸菌といった様々な菌が生息していて、
これらの菌の働きで松本醤油商店の醤油は生まれます。

麹作り

醤油を作るうえでの最も大切なポイントは「麹作り」。埼玉県産の小麦と川越産の大豆を使い、約3日間かけて麹を作ります。今では機械で制御されてはいても、温度や湿度が正確に保たれているかを調べるため、夜中にも人が麹室に入り様子を見ます。

麹作り 麹作り

発酵・熟成

麹ができたら大きな杉桶に移します。

このとき「濃口醤油」をつくるには食塩水を混ぜ合わせ、「再仕込み醤油」をつくるには生醤油を入れます。これでできた「もろみ」を約1年以上かけて熟成させます。

もろみの段階では、蔵の中に棲み着いている麹菌や酵母菌、乳酸菌といった様々な菌によって熟成がすすめられます。これら菌の作用によって醤油の出来が違ってきます。

菌の作用を促すのが杉桶の中のもろみを攪拌する「櫂入れ」。ただ混ぜればいいというわけではありません。

発酵・熟成

もろみは初期の段階では麹菌によって、その後では酵母や乳酸菌によって分解され熟成が進みます。もろみは上下をひっくりかえすように混ぜればよいのですが、酵母菌の働きで主醗酵が進み桶からもろみが溢れ出てしまう可能性があります。もろみをよく確かめながら櫂入れを行います。

搾り

熟成を終えたもろみを少しずつ布に広げ、それを何層にも重ね、3日間かけてじっくり搾り出します。

こうしてできたものが「生醤油」ですが、この段階ではまだ酵母が生きていて澱(不純物)もあり、香りも弱いものです。「火入れ」という熱を加える作業をすることによって香りが高くなり、同時に殺菌もします。温度設定や加熱時間で香りや味わいに変化を及ぼしますので、一度上げた温度を徐々に下げたり、そのまま放置して自然冷却したりして調整していきます。

搾り

職人の勘

熟練した職人が発酵の状態を味や香りでチェックする一方、社長である松本公夫は科学的分析を行ってきました。

驚くことに職人の感覚と科学的分析はぴったりと一致しました。微妙な発酵の変化を感じ取る人間の感覚は素晴しいものです。

1年醸造といっても蔵は常温ですから、そのときの気温によって400日で絞るときもあります。そのタイミングは、ベテランの職人さんにはとうていかなわないものがあります。

写真協力(人物、圧搾、攪拌):株式会社エアリーライム 撮影:元家健吾